「ルーマニア・黒海・ドナウデルタの初夏の旅」

2007年6月

 

黒海のママイア(Mamaia) 海岸。
白い砂浜の美しいリゾート地で、8キロもの長いビーチが広がっている。

 
ルーマニアの首都ブカレストからハイウエーA1をまっすぐ東へ4時間ほど走るとドブロジャ地方(Dobrogea) に入る。
この地域はドイツに源を発するドナウ川がヨーロッパ8ヶ国を通り、2,800 キロの長旅をへて黒海にそそぐ一帯である。そしてドナウデルタ(ドナウ川の三角州)は自然が豊かなヨーロッパ最大の大湿原地帯で、野生生物の宝庫と言われており、ユネスコの自然遺産にも指定されている。


ゆったりと流れるドナウ川。左側がブルガリア、右側がルーマニアの国境を流れる。

 
今回の宿泊拠点“ママイア”から北へ上がった“ドナウデルタ(Delta Dunarii) はRazim, Zemica, Sinoie などの大きな潟湖があり、周りは葦に覆われていてほとんどが広い保護区となっている。なかでも紀元前ギリシャ人が住んでいた古代遺跡のヒストリア保護区は有名である。


水鳥が豊富な潟湖
特にソリハシセイタカシギやセイタカシギ、子連れのツクシガモなどが多い。

 

水鳥の中でも嘴の赤がひときわ目立つアカハシハジロ(Red-crested Pochard)

 

上空を飛ぶペリカンの群
ドナウデルタはモモイロペリカン(White Pelican)にとって最も重要な繁殖地の一つであり、
ここでは希少種のニシハイイロペリカン(Dalmatian Pelican)も見ることが出来る。

 

ドナウ三角州はドナウ川分流と運河そして多くの潟湖がつながっていてたくさんの水路
がありボートトリップが楽しめる。サギやクロハラアジサシ3種などの水鳥はもちろん、
頭上低く飛ぶクマゲラやカワセミなども見られる。

 

ドナウデルタの大きな潟湖の一つ
浮葉植物のヒシや黄色の花が一面に咲くコウホネが密生しており、
しばしボートの行く手をはばむ。

 


潟湖の周辺の乾燥した草地にはニシツバメチドリ(Collared Pratincole) が集団営巣して
いるので歩くのに苦労する。

 


干潟にひょっこり現れたバライロムクドリ(Red-coloured Starling)
ヨーロッパではこことハンガリーでしか見られない珍種である。

 




潟湖周辺の鬱蒼と覆われたヨシには、ヨーロッパでここでしか見られない珍種
イナダヨシキリ(Paddyfield Warbler) が営巣している。
しかもヨシの高い枝先に出てきて囀るので、比較的近い距離で見られるからありがたい。
ヨシの葉陰から時々顔を出す子連れのヒゲガラも楽しめる。

 


ドナウデルタ周辺の乾燥したステップ草原。

 


ステップ草原には“ススリック”と呼ばれる地リスがたくさん営巣している。
穴から顔を出し立ち上がってこちらを見る姿は実にかわいらしい。

 


草原を代表する鳥クロエリコウテンシ(Calandra Lark) の数も多い。

 


牧草地のポールで盛んに囀るズグロチャキンチョウ(Black-headed Bunting)

 


10年前にはヨーロッパでほとんど見られなかった
イナバヒタキ(Isabeline-Wheatear) も温暖化の影響か、かなりの数がルーマニア近辺
でも営巣している。

 


草原ではあちらこちらでツメナガセキレイ(Yellow Wagtail) が囀っている。
このツメナガセキレイ学名が"Motacilla dombrowskii"で、数少ないHybridのルーマニア
亜種である。

 


静かな草原ではヤツガシラ(Hoopoe) のポッポッポという3拍子の鳴き声と
カッコウの単調な声が掛け合うように聞こえてくる。実に長閑なのんびりした
昔ながらのヨーロッパの田舎を感じる。

 


まだまだ中世が残っている国ルーマニア、しかもドブロジャ地方は今だに荷馬車がわら
を運び、犬を連れた羊飼いがたくさんの羊を追う風景も見られる。

 

小麦畑と人気がないまっすぐな農道。

 

赤いケシの花が単調な小麦畑にアクセントをつけてくれる。

 

ひまわり、とうもろこし、じゃがいも、小麦、黄色と緑のパッチワーク模様が美しい
広大な農地が続く大平原。

 

村の電柱には大きなシュバシコウ(White Stork) の巣があり、巣立ちまじかな雛が
座っていた。

 



シュバシコウの巣でちゃっかり共同生活をするスペインスズメ
(Spanish -Sparrow)、 夏羽の胸の黒いのが特徴。

 

電線にはよくヨーロッパハチクイ(Bee Eater) が止っている。
ブッポウソウとともに大変数の多い鳥である。

 

ドナウデルタの周辺には丘陵地が多い。そのうちの一つマチン山塊。

 

マチン山塊のトレールに咲く紫の花。

 

マチンの樫の森にはニシアカアシチョウゲンボウ(Red-footed Falcon) が30羽ほど
集団営巣している。彼らはミヤマガラスの巣を利用するので、ここではカラスと
タカの乱舞が見られる。このほか、固有種のバルカンコガラも見られるが、
非常に数が少ないのと警戒心が強いので見るのに少々苦労する。

 


マチン山塊の岩山の天辺で盛んに囀るコシジロイソヒヨ(Rock Thrush)

 


マチン山塊ではトカゲの固有種 Green Lizard を見ることが出来る。
緑とブルーが大変美しい長さ30センチほどのトカゲである。
(撮影:立花 民子氏)

 


塀と窓枠を水色に塗った独特な家が並ぶ“ホリアの村”ではアカシアの白い花が満開で、
ロシア系住民の "Bee Farmer" が蜂蜜を集めている。写真の色とりどりの引き出し状の
箱が蜜蜂の巣で、年老いたおばあさんがのんびりと取れたての蜂蜜を売っている。

 


広大な草原の丘に上がるとチュウヒワシ、オジロワシ、アシナガワシ、
ソウゲンワシなどのソアリングが見られる。

 


丘一面に咲くオニアザミとバッタ

 


ブリキの玩具のような20センチ以上もある大きなコオロギ。
とにかくバッタやトンボなどの昆虫が大変多い。
これだけ虫が豊富なことが鳥の数を多くしている・・・と思われる。

 


石灰岩の崖が連なるケイア渓谷に入ると、ヨーロッパではここでしか見られない
白黒の美しい希少種セグロサバクヒタキ(Pied Wheatear) が営巣している。

 


ヨーロッパのどこにでもいるハシグロヒタキ(Wheatear) の数は大変に多い。

 


垂直に切り立った崖にはニシオオノスリ(Long-legged Buzzard) の巣があり、
4羽の雛が親の帰りを待っている。

 


ハチクイやショウドウツバメの巣穴がたくさんある切り立った崖。
一つだけコキンメフクロウ(Little Owl ) の大きな穴があり、
丁度親がえさを運んで帰って来たところを見ることが出来た。
(撮影:立花 民子氏)

 


東欧らしい古い船が繋がれた黒海の静かな漁村風景。

 


以上